女子高生のワタクシが、母になるまで。
父・桐本宗輔
小柄なサツキは2,900グラムの元気な女の子を生んだ。
おかげさまで?母子ともに元気である。
すぐに五月の実家、俺の実家、ついでに姉にもメッセージを送ると、返信は「おめでとう!」の嵐である。
俺の母親などは、すぐに電話をしてきた。
「さつきちゃんに『お疲れさま』って伝えて!手が必要なときはいつでも行くからね。あ、でもそちらのお母さまもいるし、でしゃばるのもあれかな。どうしたもんだろう?」だそうだ。
誰からも温かくてにぎやかなお祝いムードが伝わってきて、たまらない喜びと面映ゆさで、表情筋のコントロールが難しくなっている。
俺は父親になった。
小さくて、誰よりもかわいくて愛おしい、あの「さつき」が、俺を父親にしてくれたんだ。
◇◇◇
その病院は日中だけ母子同室で、五月のベッドの脇に、キャスター付きの新生児用の小さなベッドが置かれていた。
「じゃ、市役所行ってくるよ」
「よろしくー!」
名前は事前に決めていたので、出生届や保険の手続がすぐできた。
命名、桐本薫。俺たちの長女だ。
新生児はほぼ眠っているが、ときどき目を見開いたときの顔は、俺にそっくりだとよく言われる。やはり顔の印象は目で決まるのだろう。
俺としては、小さなかわいらしい唇が五月に似ていると思うのだが、「新生児の唇なんて、みんなこんなものでしょう?」と、当の五月にさえ笑われてしまう。
違うんだ。俺にしか分からない独特の愛らしさがあるんだよ。