女子高生のワタクシが、母になるまで。
【ヒロイン視点】男の目には糸を引け、女の目には鈴を張れ
太陽がまぶしくて――曇天
これは――どうやらコンタクトレンズが合わなかったようだ。
疲れ目で済ますには目の痛みがひど過ぎるし、市販の点眼薬が異常に目にしみる。
あまりの痛さにレンズを外し、メガネもかけずにぼうっとしていたら、
「さっちゃん、あなたちょっと目が腫れているんじゃない?」なんて母に指摘された。
目が腫れているって、まぶたが厚ぼったくなっているという意味かと思ったら、うまく言えないけれど、白目自体が腫れぼったいというか、眼球に乳白色のゼリーか何かが張ったみたいな感じになっているのだ。
鏡で自分の顔というか目元を見てみて、思わず「気持ち悪っ」と口を突いて出てきた。
このままでは勉強にもならなそう。というか、既に日常生活に支障を来している。
とりあえず夏期講習を休んで眼科に行くことにした。
◇◇◇
一応コンタクト使用者の心得として、それなりにケアに気を付けてきたつもりだった。
だから当然、時々診てもらっている目のお医者さんがいて助かった。
もっとも今までは、簡単な診察をして「あー、異常はないようですね」で済んでいたのだけれど。
今回は結局。「角膜炎ですねー」と診断され、治療のために散瞳剤というものを点眼された。瞳孔を広げて、目の調節機能を休止させる働きがあるらしい。
それはつまり、大量の光が目の中に入り放題になるということだ。
といっても、それがどういうことなのか、建物の中ではいま一つピンと来なかったんだけど、外に出たらてきめんに「来た」。
その日はむしろ雲が優勢という薄雲りだったにもかかわらず、まぶしくて目が開いていられないのだ。
何も考えずに自転車で来たことを後悔した。こんな状態で乗って帰れるわけがない。
眼科クリニックは家から自転車で10分ぐらいだから、歩くと30分近くかかる。
その上、下を向いてそろりそろりと歩く必要があるから、さらに時間がかかる。
実際、下を向いたぐらいでは光を遮断することはできないから、まぶしいことに変わりはない。何なら目を閉じたって、やっぱり光はシャットアウトできない。
安物でもいいからサングラスなど売ってないかなと思ってコンビニに寄ったけど、残念ながら不発だった。
仕方なしに飲み物を買ったけど、そのお店にはフードコートがなかったので、店の前で目を閉じて飲んでいた。
こんなふうにやり過ごしているうちに、薬の効果が消えたり――したら楽だったんだけど、やっぱり無理だった。