女子高生のワタクシが、母になるまで。

いらんこと言い

 そんなことがあった夜、友達のナルちゃんから電話が来た。

 コンビニの前にいた私に声をかけようとしたら、桐本先生(キリセン)の車に乗せられてたらしいけど、一体どこに行ったの?という内容だった。

「え、家に帰ったけど?」
「…それだけ?」
「いやいや、ほかに何があるの?」
「だってナビシートに座るとき、腰を抱くみたいにして乗せてたし、恋人同士みたいだって…」
「ないない!絶対ない!」

 心当たりがあるとすれば、私の体を心配して背中に手を「ちょん」くらいの感じだろう。それもいろいろと説明したら、「なあんだ」で済む話だった。

 だから私もさほど気にしていなかったのだけど、その数日後の中間登校日、なぜか校長室に呼び出された。

◇◇◇

 3人いる教頭のうちで一番苦手な進藤(しんどう)珠美(たまみ)先生が、『実は学校に匿名で電話があった。あなたが担任の桐本先生と、よからぬ場所に行ったらしいという趣旨だった』というようなことをカマしてきた。

「え?」
「学校の近くのコンビニエンスストアで、先生の車に無理やり(・・・・)乗せられたって本当ですか?」

 あ、あの日のことか。

「いいえ、それは事実に反します。私はあの日、眼科の治療のせいで…」
 ――って、何度同じ話しなきゃいけないんだろ。本当にうんざり。

 しかも進藤先生は、聞いておきながら、こんなことを言い出すし。
 
「桐本先生も全く同じことを言っていました。職員室にその時間にいた先生も、生徒を家まで送ると説明されていたそうです」

 はいっ。じゃ、そういうことで――と解決したかと思った、違った。

「証拠としてドライブレコーダーだろうがカーナビだろうが、何でも情報を出すって言っているけれど、あの先生ってそういう理詰めで煙にまくところがあるから…」

 ったく、本当に一言余計なババアだな。だから嫌いなのよ。
 では私も桐本センセ方式でいこうか。

「ついでに眼科の先生と、うちの母にも証言させましょうか?」
「は?」
「家を出た時間から待機時間と治療に要した時間を引いて、帰宅時間までに「よからぬ場所」に寄る時間があったかどうか、すぐ割り出せると思いますけど」
「それは…」

 進藤先生は返事に詰まったようで、悔し気に顔をしかめた。
 それまで黙って聞いていた校長も、「はい。もう2人の潔白は証明されたということでいいのでは?」と助け船を出してくれたので、私も解放された。

 進藤先生も多分私のこと嫌いだろうなあ。

 というか、その匿名電話って絶対「内部」の犯行じゃん。嫌な感じ。
 ナルちゃんは私に事実確認をしているし、フレネミーっぽい影のあるタイプではないのでリストから外すとして、コンビニ店内にいた人とか、通りすがりとか、幾らでも容疑者はいそう。 

 どうせなら、そういうしょーもないことするやつを割り出して説教してやってよ。
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