男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
1
「初めまして、だな。トリニダード男爵令嬢」
肩まで伸びる白銀の髪が光を受けて、煌びやかに輝きを放ち、後頭部で一つに結んだ髪から一房落ちる前髪の隙間から、情熱とか灼熱とかの言葉を彷彿させるような赤い瞳が、怪しく私に向けてきらりと光っている。
「なんだ、緊張して固まってるいるのか?」
そう言って、彼の瞳と同じ色をした私の長い髪を一房掴み「チュッ」なんて音を立てて、そこにキスをする。
初めましての距離感ではない手慣れたその様子に、私の体は思わずピクリと揺れた。
――どうしてこうなったのか。そう思わずにはいられない。
私はただいつものように夜会に参加し、将来は自分で事業を展開し、自由気ままに生きられるように資金調達の為にパーティに参加していただけなのに。
なのに、どうして。
私は今、キールに壁ドンされて迫られているのだろうか……?
***
さかのぼること、数か月前。
前世で私は、ちょっと名の通ったマンガ家だった。
代表作となったのが『青い瞳の侯爵様は愛をささやく』という令嬢ものの異世界ファンタジーマンガを描いていた。
締め切りギリギリに脱稿し、ヨッシャー! と拳を突き上げながら原稿を出版社に向けて送り出し、祝いの盃と称して近所の居酒屋でお酒を浴びるほど飲んだ……帰りだった。
肩まで伸びる白銀の髪が光を受けて、煌びやかに輝きを放ち、後頭部で一つに結んだ髪から一房落ちる前髪の隙間から、情熱とか灼熱とかの言葉を彷彿させるような赤い瞳が、怪しく私に向けてきらりと光っている。
「なんだ、緊張して固まってるいるのか?」
そう言って、彼の瞳と同じ色をした私の長い髪を一房掴み「チュッ」なんて音を立てて、そこにキスをする。
初めましての距離感ではない手慣れたその様子に、私の体は思わずピクリと揺れた。
――どうしてこうなったのか。そう思わずにはいられない。
私はただいつものように夜会に参加し、将来は自分で事業を展開し、自由気ままに生きられるように資金調達の為にパーティに参加していただけなのに。
なのに、どうして。
私は今、キールに壁ドンされて迫られているのだろうか……?
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さかのぼること、数か月前。
前世で私は、ちょっと名の通ったマンガ家だった。
代表作となったのが『青い瞳の侯爵様は愛をささやく』という令嬢ものの異世界ファンタジーマンガを描いていた。
締め切りギリギリに脱稿し、ヨッシャー! と拳を突き上げながら原稿を出版社に向けて送り出し、祝いの盃と称して近所の居酒屋でお酒を浴びるほど飲んだ……帰りだった。