男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「しかしリーチェ。お前はコーデリア公爵とも良い恋仲だったのではないか?」

 きた。絶対このことを聞かれると思ってたのよね。ここでちゃんと釘を刺しておかなくちゃ。

「恋仲だなんて、パパもご存知でしょう、コーデリア公爵様がどのような方かを……特に女性に関する噂の一つや二つは聞いたことがあると思いますが、私の事なんて眼中にありません。本気になってはいけない方ですし、あの方もそんなつもりは全くないです」

 私は伏し目がちで演技を始めた。前世漫画家じゃなく女優だったんじゃないかってくらいの名演技だ。
 困ったように眉毛を八の字に変えて、フォークとナイフをテーブルに置いた。

「根っからの遊び人ですから。特に田舎男爵は初心だと言って楽しんでいる様子でした」
「ふむ、まぁコーデリア公爵ならそうだろうな」

 さすがにマルコフも私の意見に納得してくれた。社交界に一度も出た事のないマルコフでさえキールの噂話は届いていた。

「今まで女性の噂を聞くどころか、煙たがっていたあの侯爵がお前と婚約を結びたいと言ってきたのだ。根のない花よりどっしりと地に根を張った大木の方がお前も安心だろうしな」

 ガハハと笑いながらマルコフはワインを飲む。

< 101 / 310 >

この作品をシェア

pagetop