男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 細い瞳が大きく見開かれ、レオンはすぐさま階段の一番下へと移動する。
 私が最後の一段を降りようとした先で、レオンが私に手を差し出した。

「リーチェ、今日は一段とお美しい。この世に女神が現れたと言われても、美しさでは今のあなたの足元にも及ばないでしょう」

 そう言って、レオンは私の手の甲にキスをした。

「……ありがとうございます、レオン様」

 ゾワゾワゾワゾワ……と、腰の辺りから背筋を駆け上がってくる何かに、私の体は小さく揺らぐ。
 だめだ。レオンに褒められるのは、いくらイメトレしたとはいえ、慣れない。
 慣れないし、恥ずかしくて死にそうなのに、幸せだと感じるこの幸福感と高揚感のコラボレーション。
 死して屍拾う者なし……それでも結構だ! ここで死んでも一片の悔いなし!
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