男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「仲睦まじく、結構結構!」

 ガハハと笑うマルコフを横目に、私はレオンのエスコートを受けて玄関へと向う。

「こうして並んでみると、とてもお似合いではないですか」

 おっと、今マルコフが「よっこらせ」と太鼓を肩に担いだのが見えた。

「今夜の為に衣装も色合わせしてきたようだし、今日の主役は二人に決まったも同然ですなぁ!」

 そんなわけがない。夜会の主役は夜会を開いた側にある。私達ではない。
 しかしマルコフはさらに「ヨォーオッ!」と掛け声でもかけそうな勢いで、言葉を打ちつけていく。

「きっと誰もが侯爵様とリーチェに注目する事でしょう。なにせ、新たに婚約を結んだばかりの二人なのですからな。候爵様の聡明さとみなぎる強さに惹かれる女性は多いのだと噂されていましたが、まさにまさに! 若くして当主を担うお方なだけありますなぁ」

 ポンポンポンポンポンーーと、わかりやすくヨイショするマルコフの言葉に、レオンは何も言わない。

 怖いのは、マルコフがさりげなく“婚約を結んだ”とか言ってる事だ。いや、結んでないし。確かにレオンはその意思があると仄めかす手紙をマルコフ宛に送っているはずだけど、婚約してないし。
 勝手に事実をねじ伏せつつ、外堀を固めるように噂でも流し出しそうな勢いで、さすがにこれは危険だ。

 マリーゴールドに出会った時に私もレオンも傷がない状態にする為にも、実際には婚約なんてするつもりがないというのに。
 話に割って入ろうとするけど、マルコフは更に言葉を畳み掛けた。

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