男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 レオンはスッと席を立ったかと思えば、私の隣に腰を下ろした。
 侯爵家の馬車の中。決して広いとは言えないこの箱の中で、レオンは私と肩が触れ合うほどの距離を詰めている。

「どうしてそんな風に私の言葉を捻じ曲げて受け取るのかが、わかりません。私はあなたを試したつもりなどありませんよ。言った通りの言葉を受け取って下さい」

 言った通りの言葉を……? 私を試しているわけではない……?

「リーチェ、私はあなたを虜にしたいのです。他の誰でもなく、あなたを」

 広い空を想像させる、青く輝く瞳。スッと伸びた形の良い鼻と、揺るがない意志を感じさせる凛々しい眉。そして、私好みの薄い唇が静かにこう言った。

「私があなたの虜であるように、リーチェにも私の虜になっていただきたいのです」

 レオンの大きな手が、そっと私の頬に触れた。
 状況も、レオンの言ってる意味も理解できないほど、私の脳がショートしたのは言うまでもない。

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