男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「でしたら、賭けをしませんか」

 私はゆっくりと体を起こし、レオンの隣に座り直す。そして真っ直ぐレオンと向き合いながら、言った。

「六ヶ月。もしレオン様の気持ちが変わらなければ、レオン様の勝ち。それ以降はレオン様の気持ちを疑う事はいたしませんし、レオン様の告白を受け入れます。ですがもし、その期間中にレオン様の気持ちが誰かに移れば、私の勝ちです」

 半年あれば、その間にイベントが起きる。レオンとマリーゴールドが出会う事になる。
 そうすれば彼も、私の言った事の意味を理解するだろう。

「わかりました。その賭けを受け入れましょう」

 レオンは私を真っ直ぐ見据えながら、澄んだ瞳をキラリと怪しく輝かせた。それは、負ける事などあり得ないとでも言いたげに。

「では、もし勝者になった際のリーチェの願い事を聞いてもいいですか? 賭けなのですから、あなたが勝者になった暁には、私から何かを望んでいるのでしょう?」
「願い事はその時までの秘密です。その方が賭けとしては楽しいのではないでしょうか」

 私がそう言うと、レオンはフッと笑みをこぼした。それは、夜空に輝く星のような煌めきを放つような笑みだった。

「いいでしょう。まぁ、私の願いは既にリーチェが言った通りなので、あなたにとってはサプライズなどありませんがね」

 そう言ってレオンは私の髪に触れ、キスをした。
 普段ならドキリと弾む心臓の鼓動。けれど今、私の胸のうちはとても静かなものだった。
 気がつけば私の鼻から溢れ出ていた血は、ピタリと止まっていた。

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