男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 そういう事を後から言う? 後出しジャンケンもいいとこじゃないか。

「その言葉に間違い無いのだろうな? リーチェの相手が父上である男爵であったなら通したのでは無いか?」
「それって……」
「リーチェの相手が俺だから通さないという事では無いのか、と聞いている」

 レオンはいつもの淡々とした表情で言い放った。
 いつもの様子には変わりないのに、威圧感を感じるのはさすがは帝国一の騎士といったところだろうか。
 レオンからの圧を受けて、従者並びに入口を塞ぐ騎士でさえたじろいでいる。

「そういうことでは無いと……」
「だったらなぜ招待状にその旨が記載されていないのか。他の招待客はパートナーを連れて入ったのだろう?」
「それは……」

 どんどん口ごもっていく従者が不憫に思えるほど、レオンはゴリゴリと責め立てる。
 いや、不憫に思う必要もないのだけど。だってそれは、レオンが言わなければ私が言っていたであろうセリフだからだ。

 キールは私とレオンの関係を知っていたと思う。
 マルコフに婚約をする旨を伝えた地点で、噂が流れるのは目に見えていた。むしろマルコフ的には噂を流し、後戻りしにくい状況を作りたかったはずだから、噂の出所は彼のはずだ。
 そんな噂をキールが知らない訳がない。
 何せ話した事も面識も無かった一介の令嬢の情報を掴み、会いに来たゲスい男なのだから。

 だから私のパートナーがレオンである可能性も考慮していたに違いない。
 そして、本当に連れてくるようであれば門前払いをするようにと従者に伝えていたのだろう事も容易に想像がつく。

< 128 / 137 >

この作品をシェア

pagetop