男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「……本人の承諾無しに、事を進めるなんてどこまでも紳士の風上にも置けない行為ですね」
「何を言う。婚姻とは本来両家とを結ぶ事を言うのではないか。当人の気持ちなど二の次だ」

 クックックッと笑うキールの顔。どうだ参ったか、お前は俺の手のひらで転がされていたというのに……とでも言いたげな表情がまたムカつく。

「両家とを結ぶ婚姻であれば、父の了承が必要なはずです。その工程を飛ばして皇帝陛下に申し出する事自体に疑問を呈しているのです」
「お前の父親には了承を得ているぞ?」
「……はぁ?」

 思わずこぼれたカジュアルな言葉。公爵相手に言うセリフではないけれど、今はそれどころではない。キールも気にする様子はなく、お腹を抱えて笑っている。
 どうやら私の反応がそれほどまでに面白いらしい。

「冗談だ。男爵にはまだ伝えていない」

 いや、それ。本当に何の冗談なの?

「順番は前後するが、何か問題でもあるのか?」
「もちろんだ。リーチェにはすでに俺という婚約者がいるのだからな」

 怒りを露わにしたレオンが、今にもキールを切ってかかりそうな勢いで会話に加わった。
 公爵家でのパーティ。騎士とはいえど今日は貴賓としての参加だ。さすがのレオンも剣を持ち歩いていない。
 ただし従者の剣を借りてでもキールに切りかかりそうな雰囲気だけど。

< 134 / 137 >

この作品をシェア

pagetop