男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「そもそも噂によると、お前達はまだ婚約を結んでいないのだろう? それにこれは皇帝陛下直々の文書だぞ。陛下が縁談を結ぶようにと言っているのだから、バービリオン侯爵とリーチェがつき合っていようと、トリニダード男爵に伝えてなかろうが優先されるのはこの書面だという事を忘れるな」

 ……私の手に剣が握られていたならば、今キールを三回は切りつけてたわ。もちろん技術的にも状況的にも、本当にできる訳ないんだけど。
 あくまで気持ちの問題だ。ゲス野郎は斬り捨て御免だ。
 なにが一番私のハラワタを煮え繰り返させるかって、キールが言うことが正しいという事実だ。

 どういう流れで皇帝に直談判し、私との婚姻の許可をわざわざ得たのかは分からないけど、皇帝が認めたのであればその書面に書かれている事は絶対だ。
 だからこうして、隣に立つレオンも殺意を露わにしながらキールの言葉をこれ以上突っぱねられないのだと思う。

 というか、なんでここまでするんだろう?
 キールのプライドや神経を逆なでした事は自負してるけど、わざわざ皇帝にまで進言する?
 ただの一介の男爵令嬢を手に入れるために?

 私とキールとの間には身分の差だってあるんだから、キールが言えば本来私に婚姻を断る選択肢などないことは、皇帝も理解しているはず。
 いくらキールに具申されたとしても突っぱねる事だってできたはずだ。

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