男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 そして私がさっき申し出た言葉に対して頑なに反対したことも、後悔し始めているのではないだろうか。
 幸運にも私達のこの関係には期間がある。ーー六ヶ月、その日が来ればレオンは晴れて自由の身。
 けれど不幸にも、彼はすでに運命の相手と出会ってしまった。逆を返せば、私達の関係にはあと六ヶ月もある。

 男主人公であるレオンは、たとえ運命の相手を見つけたとしても律儀に私との約束を守ろうとする。
 芽生えたばかりの感情を抑え込み、元ある体裁を重んじる事ができる程度には理性も保ててるようだ。

 ……けれど、そんなレオンだからこそ、私から突き放してあげなければならない。
 そうでなければ、彼は自分の気持ちに真っ正直になれず、苦悩しながら私に対する義務にも似た責任を全うしようとするから。

「お願いですから、先に彼女を安全な場所へと連れて行って下さい。私は公爵様との話が終わっていません。ですからここで私は、レオン様の帰りをお待ちしております」

 スパッと言葉を切って、私はレオンから視線を剥がした。これ以上の議論は不要だとレオンに知らしめるために。
 残酷なまでにレオンからの沈黙が続く。けれそ私は振り返らず、レオンから距離を取った。

「……分かりました。ではすぐに戻ってきますので、くれぐれも無茶はなさらないで下さい」

 囁くような言葉を残し、レオンはマリーゴールドに向かって歩き始めた。そんな彼の背中を見つめていると、本来のストーリーを思い出す。

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