男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 キールからマリーゴールドを助けてあげたレオンは、そのまま彼女に目を奪われる。一方マリーゴールドもレオンと同じくして、彼に心を奪われる。
 原稿を書いていた時には胸が躍るシーンだったはずなのに、今はどうしてこうも苦しいのか。

 ……もう少しだけ、待ってて。今はまだレオンを手放す事はできないから。
 私はまだ、レオンが必要だ。レオンの力が、自立するためには必要だ。
 今レオンを手放せば、キールにまた狙われた時の後ろ盾が何もない。
 地位のためにマルコフに結婚を強いられた時に、突っぱねることも逃げ出すこともできない。

 ああ……ここは私が作り上げた世界なのに、私は何一つ自由にできないのね。

 そう思うと、無性に胸の奥がひんやりと冷え込む感じがする。
 マリーゴールドの元にたどり着いて、レオンが彼女に手を伸ばす。それを恥ずかしそうで、私を窺うようにチラチラと視線を投げてくる様子に、無性に虚しさにも似た感情が心を支配する。

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