男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「レオン様は《《勝手》》に逆上したわけではありません。コーデリア公爵様が私とレオン様との関係を無視して、勝手に婚約などという馬鹿げた事をなさったからではありませんか」
「それは俺も知らなかった事実だから仕方なかった。むしろ俺に色目を使っていたくせにバービリオン卿と婚約だと?」
「色目、ですか? 私が? ご冗談を」

 私がいつ色目を使ったというのか。キールとの出会いは最初から最後まで、押し迫られた状況だったというのに。
 どれだけ私がキールを避けていたかもわかってるくせに、本当にペラペラと嘘をつく男だ。

「はんっ、堅物だと言われていた男が選んだ相手がまさか、こんなに尻の軽い女を立ったとはな」
「その言葉は私に対する誹謗中傷と捉えます。いくら公爵様とはいえ、謝罪を要求します」

 立場もわきまえず謝罪だと? とでも言いたげに、キールの瞳がカッと見開いた。メラメラと燃える炎の瞳。けれど今の私はもう怖くもなんともない。
 キールの様子にも動じずに、彼を睨み付ける勢いで見つめ返した。

「その破けたドレスが尻軽な証拠だと思うが?」
「これは公爵様のせいでこうなったのですよ?」

 何言ってんだと言いたいのは私の方なのに、目の前にいるこいつは私を鼻で嘲笑う。

「俺が他の令嬢を介抱してやってるだけで、勝手に逆上してドレスを裂いたのではないか。自作自演もいいところだな」

 出たな、虚言癖野郎め。今この場にその現場を見ていたレオンがいないからって、言いたい放題言ってくれる。

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