男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「そうです! あのクズ男め!」
小鳥がさえずるような可愛い声と、ぷっくりと膨らんだその小さな唇が紡ぐクズ男という言葉の威力たるや……。思わず耳の穴をかっぽじってしまった。
隣に立つレオンですらビックリしたのであろう事が、彼の肩の揺らぎで伝わる。
「えっと……?」
「ああ、失礼いたしました! 昨日リーチェ様がそうおっしゃっていたので、つい……!」
マリーゴールドは両手をマシュマロのような頬に当てて、しまったといった様子を見せたけれど、その直後にペロリと舌を出しておどけて見せる。
確かに私は昨日、マリーゴールドにそう耳打ちしたけれど……小さくて誰もが守ってあげたいと思う容姿をした天使がもし、無邪気に口汚くクズ男子を罵ったらーー最高じゃない⁉︎ なんて思った前世の私の性癖よ……。
どうか神よ、こんなに愛らしい人物の性格に私の闇部分を詰め込んだことを、お許し下さいませ。アーメン。
別にクリスチャンでもないくせに、私は胸の前で十字を切って神に懺悔していたその時ーー。
「はっ!」
私の耳に飛び込んできたその声に、思わず顔を上げた。
「バービリオン侯爵様、そんなに笑わなくったっていいではないですか?」
口元を手の甲で隠しながらも笑っているレオン。そんなレオンに向けて、下唇を尖らせて恨めしい表情を見せるマリーゴールド。けれどその後すぐに、マリーゴールドもレオンと同じようにクスクスと声を立てて笑った。
……けれどこの場で、私だけが笑うことができなかった。
小鳥がさえずるような可愛い声と、ぷっくりと膨らんだその小さな唇が紡ぐクズ男という言葉の威力たるや……。思わず耳の穴をかっぽじってしまった。
隣に立つレオンですらビックリしたのであろう事が、彼の肩の揺らぎで伝わる。
「えっと……?」
「ああ、失礼いたしました! 昨日リーチェ様がそうおっしゃっていたので、つい……!」
マリーゴールドは両手をマシュマロのような頬に当てて、しまったといった様子を見せたけれど、その直後にペロリと舌を出しておどけて見せる。
確かに私は昨日、マリーゴールドにそう耳打ちしたけれど……小さくて誰もが守ってあげたいと思う容姿をした天使がもし、無邪気に口汚くクズ男子を罵ったらーー最高じゃない⁉︎ なんて思った前世の私の性癖よ……。
どうか神よ、こんなに愛らしい人物の性格に私の闇部分を詰め込んだことを、お許し下さいませ。アーメン。
別にクリスチャンでもないくせに、私は胸の前で十字を切って神に懺悔していたその時ーー。
「はっ!」
私の耳に飛び込んできたその声に、思わず顔を上げた。
「バービリオン侯爵様、そんなに笑わなくったっていいではないですか?」
口元を手の甲で隠しながらも笑っているレオン。そんなレオンに向けて、下唇を尖らせて恨めしい表情を見せるマリーゴールド。けれどその後すぐに、マリーゴールドもレオンと同じようにクスクスと声を立てて笑った。
……けれどこの場で、私だけが笑うことができなかった。