男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 レオンのゴツゴツとした指先を追って振り返ると、そこには木製のテーブルと椅子一脚、そして本棚には無数の瓶が敷き詰められて、大自然のこの場所に溶け込むようにして置かれている。
 テーブルの上には無数の本と、前世の化学実験室で見かけそうなフラスコやらビーカーやら、それ以外にも何に使うのか想像もできないような機材が置かれている。
 その机に向かって何かをしている白いローブを着た男性。きっと彼がレオンが言う錬金術師なのだろう。

「おい、オットー」

 オットー? それが名前なんだ?
 レオンの言葉に反応して、フードを被った頭がぐいっと持ち上がった。フードから覗く紫色の髪に、真っ暗な闇を宿した瞳。どことなく虚なその目がレオンに向いた後、隣に立つ私に向けられた。

「どうも、初めまして。オットー・ノアールです」

 ニコッと笑ったつもりなのだろうけど、なんていうか……怖いんですけど?
 フード被ってるせいで最初はよくわからなかったけど、よくよく見てみると、目の下のクマがすごい。
 ここの大自然が醸し出す、マイナスイオンすらも跳ねのけそうなほど不健康そうな人物。なんだかすごく残念な気持ちにさせてくれるのは、自然と調和できていないミスキャストのせいなのかも。

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