男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「今この場であなたを抱きしめて視界を防ぐことは難しいと判断し、せめてものバリケードのつもりでした」

 なるほど。私がイケメンに弱いということを察してくれたというわけか。
 レオンはチラリとマリーゴールドの方へと視線を向ける。気付かないうちにマリーゴールドはオットーの隣に立ち、オットーの薬を不思議そうに見つめている。
 ただ、チラチラとこちらを伺う様子から、私とレオンをあまり見ないように気遣っているようにも見える。

 マリーゴールドは今、私とレオンがイチャついてるとでも思ってるのかな? 全然そんなことはないのに。
 むしろレオンはマリーゴールドを意識して、私に抱きつこうとはしなかったというのに。
 彼がハンカチを使わなかった理由も、以前のように私に抱きついて視界を妨げようとしなかった理由も、全ては彼女に繋がっている。

 ほのかに香る媚薬の匂い。あのハンカチにはあの香水を振りかけているのだろう。本当にブレない。相変わらずのブレない行動。
 ……けれどそんな彼が、そのハンカチを私に使用しなかった理由は、もう私を媚薬を使って落としたい対象だと思っていないからだろう。
 そうでなければこの状況で、レオンが私にハンカチを差し出さない理由も、媚薬香水をつけている理由も説明がつかない。

 ふぅ、と息をついた後に鼻から手を離し、気持ちを落ち着かせる。レオンからも少し距離を取って、オットーに向かって歩き出す。
 ここでの用事をさっさと済まそう。この状況はメンタルに良くない。

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