男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「リーチェ様、ここはリーチェ様の作業部屋になるのでしょうか?」

 キラキラとした瞳を向けるマリーゴールドは、まるで好奇心旺盛な子供のようだ。

「いいえ、ここは主にオットーの作業部屋となるでしょうね」

 そもそも扉を開けたら森の中なんて、果たして部屋と呼んでも良いのかわからないけれど。

「香水を調合する原料をオットーに抽出してもらいますが、店頭に置く香水や精油は調合方法を指示しておくので、それもゆくゆくはオットーにしてもらうつもりです。もちろん個別に依頼があればその方に合わせた調合を私がするつもりですが」

 レシピがあれば、わざわざ私が労働する必要はない。私が必要になるのは、そのレシピ作りとそれを下の者におろすこと、そして個別の依頼が入った場合のみ。

「まぁ! でしたらゆくゆくは私にも一つ、香水を作っていただけますでしょうか?」
「ええ、もちろんです」

 マリーゴールドは両手にこぶしを作り、身をよじらせながら喜んでいる。
 本当に可愛いな、この世界のヒロインは。私は思わずほおが綻んだ。

「よければ今、何か一つ作って差し上げましょうか?」
「ええっ、よろしいのですか⁉︎」

 興奮するマリーゴールドを横目に、私はオットーを呼んだ。今日はちょうどオットーと顔合わせと、錬金術の技を見せてもらおうと思ってたからちょうどいい。

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