男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「その陣は勝手に借りてもいいの?」
「勝手にじゃないっすよ。ちゃんとお金を払って借りてるんで大丈夫っす」
「お金? オットーが払ってるの?」
「まさか。経費で払ってくれるんでしょ?」

 そう言ってオットーは陣を描きながら、レオンの顔に目を向ける。
 気づけばレオンは私のすぐそばに立っていた。私を挟んでマリーゴールドとレオンが私の隣に立っている。

「よし、んじゃいっちょ呼び寄せますか」

 陣を描いた地面の上に、魔法使いに借りたという同じ魔法陣が描かれた紙を円の真ん中に置き、その円を踏まないようにしてオットーは立った。
 ーーパンッ! と手を叩いたと同時に「パインニードル、オレンジ、ローズオットー収穫!」と、オットーが叫んだと同時だった。
 円陣からはシュゥゥゥと旋風が噴き上げる。その風が止む頃には、円陣の中には指定した草花と果実の山が現れた。

 おお! 本当に魔法だ。すごい。
 いや、オットーの魔法でもないけど。でも前世にはなかった力がここにはあるという実感が、私の胸を躍らせる。

「あら、このローズはまだ開花前のようですね。咲き誇る前のものばかりですが、良いのでしょうか?」

 そんな疑問を口にしながら、ローズマリーはローズオットーを手にした。ローズの棘を気にしながら、七分咲の花の香りを嗅いでいる。

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