男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 そういう意味では、気を抜けない相手だな……なんて思っていたら、オットーは得意げに私を見ていた。

「当たり前ですよ。だから俺を選んだんでしょ? 俺出来るヤツっしょ? ね? 惚れてしまいそうになるっしょ?」

 惚れてしまいそうになる……そうやって惚れられたことが何度もあったのだろうか。
 まぁ、チャラそうだけど顔が良くて人当たりがいい。錬金術師として技術もある。なにせレオンが選んだくらいだ、実力もあるのだろう。
 そうなると確かに、モテてもおかしくないわね。だから初見では顔を醜くしていたのも納得できる。

 しかし、自慢げに胸を張るオットーを見ていると、私に弟がいたらこんな感じなのかな、なんて想像させてくれる。
 いや前世含め、私は一人っ子だけど。もしもの話としては想像できなくもないというだけの話なんだけど。

「ええ、出来るヤツのようね。残念だけど惚れるかどうかはわかんないし、そもそもあなたを選んだのは私じゃなくレオン様よ」

 錬金術師を雇うことを依頼したのは私だけど、選任はレオンに任せてあったのだから。

「残念ですね、オットー。リーチェ様が惚れるのはバービリオン侯爵様だけですよ」

 マリーゴールドはオットーに、耳打ちをするようにそう言った。けれど耳打ちの意味がないほど、言葉はダダ漏れだ。
 けれど私が気になるのは、’マリーゴールドはそれをどういう気持ちで言ったのか。気丈に振る舞っているだけなのか、それとも本当はレオンのことを好きではないのか……昨日見たあの光景は、私の見間違いだったのだろうか……。

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