男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「……では、お言葉に甘えさせていただきます」

 ああ、意志薄弱な自分も憎い。けれどこれが今は最善の選択な気がする。
 たぶん今日はもう、私の前にキールが現れることはないと思うけど、絶対ないとは言い切れない。
 さっきあんな険悪な状態になったばかりだし、警戒するに越したことはないよね。

 ……って、もしかして。
 私は隣を歩くレオンに、チラリと目を向ける。いつもの何を考えているのかわからないような表情を見せている。
 もしかして、レオンも私と同じことを考えてるから、医務室まで送るって言ってくれてたりする?
 私がまたキールに絡まれたりしないように、とか?

 ……いや、まさかね。


   *

 えっとぉ……治療、終わりましたケド?
 医務室で治療をしてもらい、大げさに見える包帯をしたままパーティに出るつもりも、キールがいるであろうホールに顔を出すつもりもないため、折を見て帰ろうと思って休憩室に来たのだけど……そんな私の目の前には、腕を組んで椅子に腰を下ろしているレオンの姿が。

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