男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「できました。気に入っていただければ嬉しいのですが……」

 香水をマリーゴールドに手渡すと、彼女は宝石をもらったかのような笑みで煌めく香水瓶を見つめている。
 この瓶はパフのついたスプレータイプではないため、蓋の裏側についているガラス棒についた香水を体の付けたい部位に取るか、香水瓶の口を塞ぐようにして手に取るかしてもらわないといけない。
 蜜蝋を使った練り香水でもよかったかな? なんて考えていた時だった。

「なんて良い香りなんでしょう……とても気に入りました」

 そう言って、彼女は咲き誇り始めた美麗な花のように、笑みをこぼした。
 この非現実的な場所と合間ってか、彼女はどこか神秘的に見え、私は目を見張る。
 自然と一体化し、かつ、広大なる自然の美しさをも凌駕する彼女の神々しさに、私の口は自然と閉じてしまった。

 彼女の美しさを表現する言葉を、私はきっと持ち合わせていない。
 きっとそれは、この場にいる誰もが私と同じ考えに違いないだろう。
 マリーゴールド以外に誰も口を開こうとはせず、時が止まったように動きを止めていたから。

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