男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
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あの後の記憶があまりない。私達はあの後談笑した気がするけど、私はさっさと会話を切り上げ、店を去った。
特に用事があったわけではないけれど、なんとなくあの場にいるのはいたたまれない気持ちになった。
レオンは相変わらず私を送ろうと言ってくれたが、丁重にお断りをし、せっかくだからマリーゴールドとの時間を楽しんでと勧めておいた。
丁寧に断りながらも、温かみを感じないよう努めた。
どこか一線を引いているとレオンなら気づいただろう。
逆に不躾だと思われたかもしれない。
けれどそれなら私の思惑通り。レオンから離れてくれれば、私がレオンを押し返す必要はなくなる。
ビジネス上の関係にヒビが入る可能性もあるが、当面は契約書がある。契約期間を過ぎるまではレオンと私はパートナーだ。
だから契約更新までに私がビジネスで力をつければいい。
レオンも私がそういう態度をとったことで、彼は以前よりも引き際が早くなったように思う。
これで本腰を入れて、マリーゴールドに気持ちを傾けることができるのではないだろうか。
半年の賭け。これで賭けは私の勝ちだ。
賭けで勝つのに、こんなに虚しいことはない。
マリーゴールドはどうしたものかと申し訳ない表情を見せつつ、頬がほんのり赤く高揚していた。
もう少しレオンと一緒にいられると思っての喜びの気持ちだったのだろう。
婚約者というのは形だけ。私達はビジネス上の関係。
そうマリーゴールドに伝えたから、彼女も前よりかは遠慮することもないだろう。