男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「気遣いは無用だ。ちょうど人の多さに疲れてきたところだった。医務室に行くのもパーティを抜ける良い口実になる」

 いや、気遣いでは全くないのだけれど。むしろこちらの空気を読んでもらえませんか?
 こちとらあなた様とは違ってモブキャラ設定だし、前世でもずっとひきこもってマンガばっかり描いてるような日陰な女なので、長時間の日光浴は生命力を吸い取られて瀕死状態に陥るんですが。
 生命の危機を感じるのでなるべく長時間は一緒にいたくない。
 ずっと見ていたいと思える顔を描いたはずなのに、なんとも矛盾な話だろう。

「……では、お言葉に甘えさせていただきます」

 ああ、意志薄弱な自分も憎い。けれどこれが今は最善の選択な気がする。
 たぶん今日はもう、私の前にキールが現れることはないと思うけど、絶対ないとは言い切れない。
 さっきあんな険悪な状態になったばかりだし、警戒するに越したことはないよね。

 ……って、もしかして。
 私は隣を歩くレオンに、チラリと目を向ける。いつもの何を考えているのかわからないような表情を見せている。
 もしかして、レオンも私と同じことを考えてるから、医務室まで送るって言ってくれてたりする?
 私がまたキールに絡まれたりしないように、とか?

 ……いや、まさかね。


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