男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

「私個人に香水を作ってもらいたい。もちろん報酬は払おう」
「えっ、本当ですか!」

 まさかレオンから依頼してもらえるなんて、思ってもみなかった収穫だ。
 今日はキールのせいでこれ以上このパーティにいれないと思ってただけに、完全にタナボタだ。

「ちなみに、どういったものをご所望なのでしょうか?」

 レオンがあの香りを気に入ってくれたのであれば、普段の疲れから癒されたい・解放されたいと感じているはず。
 もっと自分の状況に合わせたものを調合して欲しいって依頼かな? なんて思わなくもないけど……彼の答えは意外なものだった。

「女性を惹きつける香りを作って欲しいんだ」

 ジョセイヲヒキツケルカオリ……?
 ポッカ―ンと開いてしまった口が塞がらない。
 驚きのあまり、思わず耳の穴を指でかっぽじってしまったくらいだ。

「ちょっと言葉を聞き逃してしまったようですので、もう一度おっしゃっていただけますでしょうか?」

 何かの間違いだろう。
 そう思って改めて聞き返したら、あの仏頂面のレオンがコホンと喉をならして気まずそうにこう言いなおした。

「先ほど、香りひとつで人を好きになる事も、嫌いになる事もあると言っただろう。ならば意中の相手を惹きつける香水もできるのかと思ったのだが……?」
「えっ、それは……意中の相手がいるということでしょうか?」

 まさかもう、マリーゴールドに出会ったの? なんで? 設定的にはまだ先のはずなのに。
 っていうかマリーゴールドに出会ったのであれば、お互いに惹かれ合うはず。
 そんな惹きつけるような香りなんて利用しなくていいと思うんだけど。

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