男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「いや、それは例えだ。意中の相手がいるというよりも、気になる人が現れた時の備えとしてだな」
「えっ? それ、いります?」

 思わず口に出して言っちゃった。慌てて口元に手を当てて、今度は私が「コホン」と喉を鳴らした。
 だって、レオンがそんな香りをつけた日には、ハイエナのような令嬢がこぞってやってくる決まってるじゃん。
 それでなくとも、女性と関わるのが嫌でパーティも避けてるくせに。カモが自らネギ背負ってどーすんの⁉

「侯爵様でしたら、その必要はないかと思いますが。そんな催淫効果のある香水など求めなくとも、女性に不自由をしていらっしゃらないのでは……?」

 むしろ女性を煙たがるキャラのはずなのに、なぜこんなキャラ崩壊のような事を?
 思わず鼻血噴き出しを抑える為の左手を鼻から引きはがし、ズイッと体が前のめりになる。

「女性に不自由しているという話ではなく、今後のための保険として欲しいのだ」

 レオンの青い瞳は、気まずそうに私から視線を逸らし、部屋の中にさ迷った。
 だけど私は恥も照れも捨て去り、レオンの視線の先を追うように顔を動かした。

「それは何のための保険なのでしょうか?」

 だからそれ、いるの? レオンに落ちない女性なんていないでしょ?
 レオンの相手役であるマリーゴールドだって、レオンを一目見た瞬間に、胸がドキドキ高鳴るように描いたし。

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