男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました

 頭の中で自分の描いたマンガのページをペラペラとめくる。
 夜会に出ても女性との関わりをなるべく避け、話しかけられてもそっけない態度、ダンスの申し込みなんてもってのほか……なレオン・ベイリー・バービリオン。
 そんな彼が興味を惹く女性がマリーゴールド以外にいるはずがない。
 だったらマンガの設定より先に、マリーゴールドとどこかで会ったと考える方が筋が通るかも。

 でもどこで? その発想は大筋のストーリーがズレることを示唆する。
 悶々と考えていた時、ノックもせず勢いよく扉を開けて入ってきたのは、リーチェの父親マルコフ・ロセ・トリニダード男爵閣下だ。

「リーチェ、聞いたぞ! あのバービリオン侯爵とビジネスパートナーを組んだそうだな!」

 ㇵの字型のチョビ髭を携え、髪型は7:3でキッチリ分け、ポマードで塗り固められた髪はちょっとやそっとの風では靡かない。
 背は決して高い方ではないけれど、一代でトリニダード家を築き、男爵の称号を得た男なだけあって、威厳となるオーラを放っている。
 そのオーラが彼を大きく見せているという風に描いたが、現実世界であるこの世界では本当にその通りに見える。

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