男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「さすがは我が娘。あの堅物で有名な侯爵と関わっただけではなく、ビジネスまで起こすとはな。パパは実に誇らしいぞ!」
マルコフこそ、さすがは商人。
レオンと契約したのは昨日の夜の話なのに、今朝にはもう情報が耳に入ってるのだから。娘の私はまだ、報告すらしてないというのに。
「パパ、喜んでくれるのは嬉しいけれど、年頃の女性の部屋に入る時はノックくらいしてください」
「すまない! あまりに喜ばしい事案だったものでな!」
ビジネスパートナーになったというだけなのに、マルコフのこの喜び方はまるで私がレオンと婚姻を結んだかのように見える。
いいや、貪欲なマルコフの事だ。きっとここから徐々に娘を侯爵家に嫁がせる算段を練るつもりだっていうのが丸わかりだ。
残念ながらそうならないのが、私のポジションだというのに。
彼が下手な真似をしてレオンを刺激しないようにしなければ。
せっかくの好条件で、今のところ良好な関係でいるのだから、この関係に不用意な亀裂が入ることは避けたいところだ。
だったら先に、釘を打っておかなくちゃ。