男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 なんなら書面でも交わしておくべき?
 相手は父親とはいえ商人なんだし、それくらいしてもいいかもね。
 むしろそれを拒否った時の態度で、マルコフがどう考えているのかわかるかもしれないし。

「いいや、ビジネスパートナー兼旦那だなんて響きがいいとは思わないか?」

 ……こら、そもそも隠す気もないのか!
 ガハガハと大口を開けて笑う様子に、不快度数がグングン急上昇していく。
 こんなことならマルコフの口を小さなおちょぼ口で描いてやるんだった。
 そしたらこんな状況下でも笑いが込み上げてきてイライラも抑えられたでしょうにっ!

「パパ、私はそんな風には思いません。むしろそんな事をすれば、せっかくの私の取り分が全てバービリオン侯爵様に入ることになるじゃないですか」

 せっかく人が締結させた契約の取り分であり、あんたのそのヘンテコリンな髪型と同じ7:3配分が私個人に入ってこなくなるのは面白くない。
 働き蜂のように働いてお給料がちゃんともらえないなんて、どブラック企業じゃない。

「何を言っておる。その侯爵家の資産もお前の一部になるではないか。むしろそんな事業で稼ぐお金の何倍もの資産ををお前は得ることになる。働かなくても済むのだぞ?」

 それは夢のような話だわ。
 だけど、相手がどこぞの資産家の侯爵家の子息だったらの話で、レオンじゃなければっていう条件がついてくるけどね。
 誰が物語のヒーローを落とそうなんて思うもんですか。レオンの相手はマリーゴールドって決まってるんだから。これは運命なのよ。

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