男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「そちらの件に関しては礼には及ばない。むしろ手土産を持参してくれてありがとう。早速開けてもいいか?」
「もちろんです。お気に召していたければ幸いにございます」

 丁寧に包装した包み紙の中、無地の箱を開けた先には、私がレオンの為に作った香水瓶が入っている。その瓶もレオンのイメージに合うように、淡いブルーボトルだ。

「これは、私が依頼したあの……?」
「いいえ、違います!」

 期待していたであろうレオンの気持ちが膨らみ切る前に、私はバッサリと一刀両断した。っていうか媚薬香水……本気じゃん。本気で欲しがってるやつじゃん。

「そちらはバービリオン侯爵様の疲れを癒す為にご用意した香りでございます」
「そうか」

 先日レオンが持っていた香水と似たようなブレンドのものだ。っていうか溜め息までついてさ、そんなあからさまに落胆しなくてもよくない?
 レオンは私が持ってきた香水瓶を手に取り、早速それを空中に向けてシュッとひとふり。すると香りが辺りを満たし始めた。

「確かに、今持っているものとは香りが違うな」
「はい。侯爵様の状況から察し、調合してみました」

 レオンが持っている香水はラベンダー、ローズウッド、サンダルウッドのブレンド。あれは一般的に販売するように調合したものだけど、今回のはもっとレオンの生活に寄り添った調合にしたつもりだ。

< 53 / 137 >

この作品をシェア

pagetop