男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 ……ひぃっ!
 思わず声を上げそうになったのを、必死になって抑える。イケメンに無言で見つめ返されたら、心臓が持たない。だけどこれに慣れなければならない。
 なぜなら私は、これからもっと大それた事を彼にお願いしなければならないのだから。

 大丈夫。あれからずっと私はありとあらゆる角度からのレオンの似顔絵を描きまくり、目が合っても鼻血を出さないような、まさに血のにじむ訓練を繰り返してるのだから(現在進行形で)!
 イラストは角度を変えながらも、レオンの視線は真っすぐ私に向くように描いた。変態臭いと言われようとも、そうでもしなければこの美貌に一生慣れる事はないだろう。

 キャラデザしてる時、私の漫画を担当してくださっていた編集者さんにはヒーローは無駄すぎるくらいにイケメンに! って言われて描いたのもあるんだけど、イケメンに無駄なんてないな。むしろごちそうさまです! 同じ空間にいて、同じ空気を吸えるだけで幸せです‼

「ところで、リーチェ嬢。今日は相談があると言っていたが、それは一体どういう話なんだ?」

 再びレオンの青い瞳に私が映り込む。サラツヤな前髪の隙間から覗くその目に、無駄にドキマギしてしまう。
 どうやらまだまだ鍛錬が足りていないようだ。
 そんな胸の内を悟られないように、紅茶を一口飲んでから、私はゆっくりと口を開いた。

「コーデリア公爵様より招待状が届きました。どうやら近々、公爵様のお屋敷でパーティを開くそうで、そこに私が招待を受けたのです」

 形の良いレオンの眉毛がピクリと揺れた。そんな小さな動きですらハッと息を飲むほど美しい。

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