男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「もちろん。あなたの事は信頼に足る存在だと感じているからこそ、こうして共に事業をしようと言ったのだ。むしろそこは信じてもらいたいところだな」
「であれば私にも信じられる要素が必要かと思いますが?」
「……私が信用できないと?」
「少なくとも媚薬香水を欲する候爵様に関しては、そうですね」

 信頼というか疑問というか。キールと違ってレオンは信用できるけど、それとこれとは別の話だ。
 というかなぜ彼がこんなものに固執しているのかが気になるというのが、私の本音なのだけど。
 普通に聞いても答えてくれないから、方法を変えるしかないよね。

「もちろん侯爵様の色恋に関して口を挟むつもりはございません。しかし、私達は足並みを揃えて事業を発展させるために手を組んだビジネスパートナーです。ましてや媚薬香水はこの事業の要となる可能性も秘めています。そんな中でパートナーが私的に媚薬に興味があるというのは、一抹の不安を感じずにはいられないのも事実です」
「これを使って犯罪でもすると? もしくは複数の女性を囲いたいと、この俺が考えているとでも言いたいのか?」

 ……ひぇっ!
 めちゃくちゃ怒ってるじゃん……さっきまで一人称で私って言ってたのに、今では俺になっちゃってるし。
 つい数分前まで和やかに笑っていたレオンから、殺気のような冷気を感じる。声にもドスが効いてるし。

 帝国きっての騎士であるレオンの殺気は、一介の令嬢には拷問に近いんだけど!
 この空気圧だけで私、血を吐いて死ねる気がする……。

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