男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「一度、仕切り直しが必要なようだな。悪いが人を呼ばせてもらうぞ」

 テーブルの上に置かれていたベルを手に取り、それが鳴ったと同時に執事だろうか? 身なりを整えた男性が部屋の中に現れた。

「着替えの準備を。その間に新しく紅茶を入れなおしておいてくれ」
「かしこまりました」

 すっと立ち上がり、濡れたまえがみを掻き上げたレオンは水も滴るいい男。媚薬香水をつけた時よりも色っぽい。
 ほんと、イケメンの破壊力ってやばいな。媚薬香水なんてつけなくとも、常に蠱惑的な何かを放ってる気がするし。
 私はこれ以上、レオンの色香に当てられないよう視線を逸らした。

「安心してくれ。この屋敷の人間は口が堅い。この部屋で起きた事を誰も口外する事はない」

 鼻血のことを言ってるのだろうか? それともこの紅茶の惨劇な状態を差して言ってるの?
 どちらにしても、今となってはどうだっていいわ……。
 私が返事をする前に、レオンは執事に向かってこう指示を出した。

「リーチェ嬢にも着替えと、その手伝いをする侍女も回してやってくれ」
「えっ? あっ、いえ、私は……」
「身なりは整えた方がいい」

 言われて自分のドレスに視線を落とすと、胸元には紅茶のシミに加え、鼻血の色もあちこちに飛んでいる。
 確かにこれは、見てられないかも。

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