男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「ですが今日は着替えを用意しておりませんので」
「急いでドレスを買い付けさせよう」

 わざわざ⁉

「出来あいのドレスになるが、今着てるドレスよりはマシだろう。不平や不満は受け付けるつもりはないぞ」

 いや、言わないから。
 というか私の論点はそこじゃない。

「買い付けさせるまで時間がかかってしまうのではないでしょうか?」
「この後の予定があるのか?」
「いえ、特にはありませんが」

 私はないけど、あなたは忙しいでしょ?
 今日は騎士の訓練に出てないってことは非番なはず。だったら侯爵家当主としての仕事がわんさかあるでしょうよ?
 そう思って言ったんだけど。

「ならば、ゆっくり湯あみでもして着替えればいい。ああ、鼻血が出ているのであれば湯に浸かるのはよくないな。それまであたたかい飲み物とデザートでも用意させるから、部屋でゆっくりするといい」
「いえ、あの」
「終わったら一緒に食事を取ろう。そこで話は聞くことにする」

 淀みなく流れていく会話に口を挟めず、結局レオンは言いたい事を言って部屋を後にした。
 ああ……今日も一日が、長くなりそうだ。

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