男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「……なるほど、確かにリーチェの言う通り錬金術師を囲い込み、自社で生成させる方が安価で効率もいいな」
「はい。私もそう思います」
「ではすぐにでも腕の良い術師を探してみよう」

 レオンが視線を執事に向ける。それを受けた執事は静かにお辞儀をし、部屋を後にした。
 私はやっと肩の荷が下りた気持ちで、ホッとする。これで本当の意味で食事もお酒も楽しめるわね。

 疑いようのないほどレオンが固執している媚薬香水。
 未だに理由は分からないけれど、彼があれを本気で欲してるからか、この事業に関しての出資は糸目をつけなさそうだとは思っていたけど、でもやっぱりお金が絡むことをお願いするのって疲れる。

 前世のマンガ家って職業では出版社と契約をして仕事してたけど、ある意味で自営業というか個人事業主だった。
 でもこんなふうに事業を興した事もなければ、大きなお金を私が動かすことも無かった。
 アニメ化の交渉も金銭のやり取りも全て、出版社がやってくれてたわけだし。
 最後に運ばれてきたデザートのシャーベットに舌鼓を打っている時、レオンの青い瞳は真っすぐ私を捉えていた。

「どうだ、食事は口に合っただろうか?」
「はい、とても美味しいです」

 しまった。気が緩み切ってしまってた。
 今日は話さなければいけなかった二つを無事解決できて、ほっとしてしまってた。

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