男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
「私とリーチェ嬢が一緒に来たというのを他の貴族達にも分かるよう色を合せておこうかと思うのですが、いかがでしょう?」
「で、ですが侯爵様……」
「レオンです」

 いや、今はそんな話してる場合じゃないのに、名前の事をいちいち突っ込んでくるわね。

「レオン様、それではまるで私達が恋人同士だと言ってるようなものではないですか」

 パーティで服の色を合せるのはカップルだという暗黙の了解だ。
 前回キールのゲス行動を心配してくれたレオンの計らいなんだろうけど……さすがにそれはだめじゃない?
 レオンにはマリーゴールドという運命の人がいるわけだし。

「大丈夫です。私達が共に手を取って事業を立ち上げた事を知る人間はまだほとんどいない状況です。きっとパーティの頃にはそういう噂も流れているでしょうから、不要なまでの誤解は生まれないでしょう」

 いやいやいやいやいや。絶対生まれますって。
 あなたは自分が周りからどのような目で見られてるのか、知らなさすぎるでしょ。
 氷のハートを持つ男って舞踏会では言われているっていうのに。
 どんな美貌もレオン侯爵の前ではただの壁に飾られた花と同じ。
 花はこの男の凍り付いたハートを溶かすことはできないってもっぱらの噂だというのに。

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