男主人公が私(モブ令嬢)の作る香水に食いつきました
 思わず首を傾げていると、レオンは料理がまだ途中だというのに、そばにいた従者に食器を下げるよう指示をした。
 食器を下げた後、彼はテーブルの上に両肘をついて両手の指を絡めた。

「その関係ではありませんよ。私とリーチェ嬢がつき合っているという事を伝えたいと考えています」

 …………はい?
 まっ、待て待て待て。
 つき合う事は前提なの?
 いや、そもそも論点はそこでもないかも!

「あの、付き合うかどうかは別にして……」
「いいえ、付き合ってる事にするのです。そうすれば全てが丸く収まります」

 ……やばい。脳内に銀河が見えた。
 私の推しであり私の理想の男性象であるレオンが、銀河の果てから来た宇宙人みたいに見えてきた。

「言ったでしょう? つき合うことは私があいつのパーティにリーチェと一緒に行く条件だと」
「それはズルです。私がパーティの事を話した時は、そのような条件はおっしゃらなかったではありませんか。後からこじつけて言うのは、ビジネスの上で信用度を失うほどの事案ですよ」
「ですがこれに関しては書面を交わしていませんよね?」

 うぐっ!

「それにこの件がリーチェのプライベートな案件だと言うのであれば、私が無償で助ける理由はないのでは?」

 うぐぐっ!

「でっ、ですが……私は媚薬香水をお持ちしましたよね?」
「それについても、あなたはこれを試作品とおっしゃいましたよね?」
「そっ、そういう言い方をしたのは謙遜ですっ!」
「だとしても、媚薬香水を私に提供すると言う約束はすでにこの香水事業を共にする上での契約内容に組み込まれた約束ですよね? であれば、やはり私にとってなんの得もないと思うのですが?」

 はて? なんて首を傾げる様子に、私は奥歯をギリリと噛みしめる。
 くっ、ムカつくけど言ってる事は全部正論じゃないか!

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