ふたつの秘密
☆☆☆

どれだけイジメられても、どれだけ孤立していても、気がつけば彼のことを思い出している。
隣のクラスのメーク男子。

あざとくて可愛いと女子生徒にはとても人気の彼が、どうして私に声をかけてくれてリップを塗ってくれたのか、未だにわからない。

誰にも秘密のその出来事のおかげで、私は今日も学校へ来ることができた。
3時間目は移動教室で、私は筆記用具を持って教室を出た。

みんな友達に声をかけあって移動しているけれど、私は今日もひとりきりだ。
みんなの背中を見つめながらトボトボと歩いていると、前方から彼が歩いてくるのが見えた。

ハッとして背筋を伸ばす。
1人でいるところを見らるのはちょっと恥ずかしいから、せめて悲壮感が出ないように気をつけた。

一瞬彼と視線がぶつかり合う。
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