ふたつの秘密
なんで?
どうして?
あれは彼が私だけにやってくれたことじゃなかったの?

そんな疑問が浮かんでくるけれど、驚きすぎて言葉にならない。
もしかしてこれは彼が誰にでもやってあげていることなんだろうか。

リップを塗るという行為に、特別な意味なんてなかったってこと?
ショックを受けて後ずさりしたとき、彼がこちらに気がついて振り向いた。

ハッと息を飲む私へ向けて人差し指を立てる。
「絶対に秘密だよ」

口パクでそう言ったのがわかった。
なにそれ、どういうこと?

混乱する頭のまま、その場から逃げ出した。
忘れ物のことなんてもうどうでもよくなっている。

絶対に秘密だよ。
その理由を、私は翌日になってから知ることになる。
< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop