友達オーディション
近くでその声を聞くと吸い込まれてしまいそうだ。
千佳はほぅ……と、ため息を吐き出して黙り込んでしまった。

自己紹介しただけでこんなになるんじゃ話しにならない。
「ちょっと千佳。会話がしたいんじゃなかったの?」

私は千佳の肩を叩いて促す。
すると千佳は我に返ったようにまばたきをして「あ、あの。その香水、いい匂いだねぇ!」

「あぁ、これ? 私もお気に入りなの」
ニッコリ微笑む姿はまるで百合の花だ。

派手すぎない。
だけど確固たる存在感を放っている高嶺の花。

決して誰にも触れることができない花なのに、ただよう雰囲気は気さくで誰もが寄せ付けられてしまう。
そんな感じ。
< 10 / 213 >

この作品をシェア

pagetop