友達オーディション
もうひとつ取り出されたのは小ぶりな黒い袋だった。
トイレの汚物入れとかに使われているものだ。
「化学室の鍵は開けておいたから、心配しないでね」

「で、でもこれじゃ、順番が早い人が有利になるよね?」
春美が不安そうな声を上げる。
確かに、強い毒物を持って来ようとすれば、順番が要になってくる。

「運がいいか悪いかも、私の友達には必要なことなの」
椎名が冷静な口調でそう言うと、そうなのかもしれない、きっとそうなんだろうと思えてきてしまう。

春美もそれ以上はなにも質問しなかった。
「さ、それじゃみんな一本ずつ割り箸を持って」

ここで出遅れまいと全員が一斉に割り箸へと手を伸ばした。
私も負けじと手を伸ばす。

一本の割り箸を手に持つだけなのに、緊張から微かに震えてしまった。
「いっせーの!」
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