友達オーディション
と、英明は言っているけれど、そうだろうか?
疑問が残ったまましのぶの番になった。
しのぶはものの10分ほどで教室へ戻ってきていた。

黒い袋を乱暴に教卓の上に置いて、大げさなほどのため息を吐き出す。
いい薬品はもうほぼ残っていなかったのだろう。

その表情は苛立っている。
「これで全員分そろったわね? じゃあ、せーので中身を出しましょう」

椎名に言われて私達は教卓を取り囲んで立った。
そして自分の袋を引き寄せて、片手を入れてビンを掴む。

その間しのぶが春美の袋と自分の袋をすり替えようとしたけれど、すぐに椎名に指摘されて手を引っ込めていた。

さっきの暴言でしのぶの印象はマイナスへ傾いているはずだ。
これ以上失態を繰り返せば椎名の友達として失格になるに決まっている。
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