友達オーディション
それは千佳が選んできた薬品だ。
椎名に選ばれたことで千佳の表情が明るくなる。

まるで椎名自身に自分が選ばれたような気分になって高揚してくるけれど、それを顔に出さないように我慢しているようだった。

椎名は下品な友達を好まない。
だからできるだけ冷静に、嬉しさを柔らかくほほえみに変えて表現している。

「これを使おうかな」
「ありがとう」

千佳が間髪入れずにお礼を言うと椎名も笑顔で「こちらこそ。こんないいものを持ってきてくれてありがとう」と返事をしている。

千佳は椎名にお礼を言われたこと、椎名の力になれたことが嬉しくて仕方ない。
本当はその場で飛び跳ねて喜びたいくらいだったけれど、それもどうにか我慢しているように見えた。

「じゃあ、次のテストの説明をするわね。この臭素酸カリウムを、私以外の誰か1人にかけなさい」
その命令に一瞬時が止まった。
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