友達オーディション
英明がまるで呪詛のように呟く。
けれど直樹も諦めていなかった。
右足で英明の股間を思いっきり蹴り上げたのだ。

急所を突かれた英明は直樹から両手を離して床に転がる。
直樹激しく咳き込みながらもどうにか立ち上がり、苦しんでいる英明の体に馬乗りになった。

そしてその頬を右から左から殴りつけた。
英明の鼻や口の端から血が流れ、それでも直樹は攻撃をやめなかった。

椎名に言われたのが、相手を殺すことだったからだ。
直樹は英明が死ぬまでやめない。

止まらない。
それなのに、なんだか私の胸の中がモヤモヤとした気持ちになった。

この気持はなんだろうと思って自分の胸に手を当ててみたけれど、思い出せなかった。
昔は知っていたなにかだったような気がするけれど、今は思い出せないからきっと関係ないんだろう。
「面白いわね」
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