友達オーディション
椎名を楽しませることが一番大切なのだと、ふたりが理解しているかどうかが問題だった。
ジリジリとした時間が数分過ぎた時、先に動いたのは千佳だった。

突然身を屈めたかと思うと、次に立ち上がったときにはその右手にバッドが握りしめられていたのだ。
驚いていると隣で椎名がクスクスと笑った。

「男女で戦うのは不利だから、予め渡しておいたのよ。千佳は相手を油断させるためにバッドを机の下に隠したおいたのね」
そういうことか、と納得して視線を戻すと重人は明らかに動揺していた。

逃げ腰になっている重人へ一気に距離を縮める千佳。
だけど千佳はバッドの扱いに慣れていないのか、ブンブンと闇雲に空を切るばかりだ。
バッドは少しも重人に当たらない。
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