友達オーディション
重人はそれに感づいたようで、一歩前に出ると迫ってくるバッドを片手で掴んだのだ。
「ぐっ」
と低い声を上げる重人。

しかしバッドはしっかりと握りしめたままだ。
「は、離してよ!」
千佳が青ざめて必死でバッドを振り回す。

重人は両手でバッドを握りしめると、力づくで千佳からそれを奪い取った。
非力な重人でもさすがに千佳よりは力が強かったみたいだ。

バッドを奪い取った勢いでそれは机のリングから外へと放り出されてしまった。
「あぁっ」
千佳が悲痛な声を上げる。

「まれに見る泥仕合ね」
椎名が呆れたため息を吐き出した。
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