友達オーディション
せっかくバッドを与えたのにすぐに使い物にならなくなったのが不服みたいだ。
「本当に、見ていられないよね」

私はすぐさま椎名に同意してため息をついてみせた。
胸の中では不安や焦りが渦巻いているように感じられたけれど、それは見て見ぬ振りをした。

「絶対に……負けない!」
千佳が叫んだかと思うと椅子を両手で持ち上げて重人の頭部へと振り下ろしていた。

狭いリングの中だから重人はうまく避けることができなくて、その場に倒れ込む。
身を捩って苦しむ重人の腹部を千佳が勢いよく踏みつけた。

その時にバキッとなにかが折れる音が聞こえてきて重人が「グアアア!」と聞いたことのないような悲鳴を上げた。
「肋骨が折れたみたい」

椎名が身を乗り出して試合を見つめる。
< 155 / 213 >

この作品をシェア

pagetop