友達オーディション
知らない間に呼吸を止めていたようで、大きく空気を吸い込んだ。
額から落ちてきた汗が自分の太ももを濡らしていく。

ジリジリと焦げたような痛みはまだ続いていたけれど、それを口に出すこともしなかった。

「最後は千佳ちゃんね。我慢できるかな?」
椎名が千佳の目の前で試すようにスタンガンを左右に揺らす。

千佳は奥歯を噛み締めて何度も頷いた。
そして千佳の腕にもスタンガンが押し当てられた。

バチバチと激しく音が響き渡り、その中に微かな呻き声が混ざった。
見ると千佳が小刻みに震えて涙を流している。
「う~ん、頑張りは認めるけど、まぁまぁかな?」

千佳からスタンガンを離した椎名は首を傾げている。
今の呻き声でもダメだったみたいだ。
千佳が大きく息を吐き出し、鼻をすすり上げた。

この状況じゃ涙を拭くこともできない。
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