友達オーディション
「次はなにを使おうかな?」
椎名が鼻歌交じりに器具を選んでいる。
その後ろ姿を見ていると本当に楽しいのだということが伝わっていた。

「そうだ! 先にあれを準備しておかなきゃね」
何かを思い出したように呟き、また教卓の下を探り始めた。
椎名が取り出したのは小さな電気ケトルだ。

すぐにお湯が沸くタイプのもので、温度設定は100度まであるはずだ。
一旦教室を出た椎名はすぐに戻ってきて電気ケトルのコンセントを指した。

熱湯を用意してどうするつもりなんだろう。
考えると頭の中が真っ赤に染まってしまいそうに思えて、私は電気ケトルから視線を外した。

あれを使うとしてもまだ先だ。
熱湯ができてからだから、気にしないことにしよう。
< 177 / 213 >

この作品をシェア

pagetop